クライアント概要:東京を拠点とする金融事業者様(従業員100名以上)
- 業界: 金融(暗号資産)
- 地域: 東京
- 規模感: 従業員数 100名以上
国内で暗号資産取引所を運営されており、システムの安定稼働とセキュリティを最重要視されている企業様です。
開発課題:サービス無停止が絶対条件の「Angular.js」リプレイス
クライアント様は、既存の暗号資産取引所フロントエンドにおいて、深刻な技術的課題に直面していました。
- レガシー技術(Angular.js)のサポート終了: フロントエンドに採用されていた Angular.js の公式サポートが終了(EoL)しており、セキュリティ脆弱性の観点から早急なリプレイス(Vue.jsへの移行)が経営課題となっていました。
- サービス無停止での段階的移行: 暗号資産取引所という特性上、サービスを一時停止することは許されません。稼働中のサービスに影響を与えず、新旧の機能を段階的に入れ替えていく高度な移行戦略が求められました。
- 社内リソースの不足と仕様の複雑性: 社内の開発チームは、新規機能開発で手一杯の状態でした。さらに、サービスが大規模であるため、既存の仕様を完全に把握することが困難であり、リプレイスに伴う本番バグ(デグレード)のリスクを最小限に抑える必要がありました。
ALBYのソリューション:「安全な段階的リリース」と徹底した品質担保
1. スコープ管理と段階的リリース
- 移行対象の膨大な機能を小さなスコープ(機能単位)に分割し、優先順位付けを行いました。
- 「移行が容易な画面」から「取引の根幹に関わる複雑な画面」へと、スプリントごとに段階的に開発・リリースを繰り返す戦略を採用。これにより、万が一の際の影響範囲を最小限に抑えました。
2. リバース・エンジニアリングによる「テストケース」の再構築
大規模システム移行の最大のリスクである「仕様把握の漏れによるバグ」を防ぐため、ALBYは既存仕様の徹底的な分析から着手しました。
- 稼働中のサービス(Angular.js)の挙動を分析し、仕様把握と品質担保のためにテストケースをゼロから作成。
- これにより、暗黙知となっていた仕様をドキュメント化し、新フロントエンド(Vue.js)が満たすべき要件を明確化しました。
3. API連携(I/O)の厳格な担保による影響範囲の限定
フロントエンドの刷新において、既存のバックエンド(Ruby on Rails, MySQL)へ悪影響を与えないことは絶対条件でした。
- ALBYは、フロントエンドとバックエンド間のリクエスト(I/O)の仕様を厳格に担保。
- 作成したテストケースに基づき、API連携部分に影響が出ないことを徹底的に検証し、フロントエンド以外のシステムに一切影響を与えることなく移行を遂行しました。
4. 顧客との密な連携と能動的なプロジェクト推進
仕様が複雑なプロジェクトにおいて、ALBYは単なる開発リソースとしてではなく、パートナーとして能動的にプロジェクトを推進しました。
- クライアント様と密にコミュニケーションを取り、仕様の確認や課題の早期発見に努めました。
- KPI(重要業績評価指標)の設定や進捗管理についても積極的に提案を行い、プロジェクト全体の成功に大きく貢献しました。
採用技術スタック:レガシーからモダンへの安全な移行
- Vue.js (移行先): モダンで軽量なフロントエンドフレームワークとして採用。
- Angular.js (移行元): サポート終了した既存技術。
- Ruby on Rails (バックエンド): 既存のバックエンドシステム。
- MySQL (データベース): 既存のデータベース。
導入効果:サービス無停止での技術的負債解消と、開発資産の構築
ALBYのソリューションにより、クライアント様は以下の重要な成果を得ることができました。
- サービス完全無停止でのリプレイス完遂: 計画通り8ヶ月間、取引所のサービスを一切停止することなく、Angular.jsからVue.jsへのフロントエンド刷新を安全に完了させました。
- 技術的負債の解消とセキュリティリスクの回避: サポートが終了した技術を一掃し、セキュリティリスクを根本から解消。将来的な機能追加にも対応しやすい、モダンな開発基盤を再構築しました。
- 「テストケース」という開発資産の獲得: ALBYがゼロから作成した詳細なテストケースは、リプレイスの品質担保だけでなく、今後の新機能開発における「仕様書」として、クライアント様の貴重な開発資産となりました。
- 社内リソースのコア業務への集中: リソースを圧迫していたリプレイス作業をALBYに委託することで、社内の開発チームは付加価値の高い新規機能の開発に集中することができました。
まとめ:アジャイル開発で実現する、ミッションクリティカルなシステム移行
本事例は、金融システムのような「止めることが許されない」大規模サービスであっても、適切なアジャイル開発の手法と徹底した品質管理(テストケース作成)により、安全かつ迅速な技術刷新が可能であることを示しています。
株式会社ALBYは、ゼロからの開発やPoC・MVP開発だけでなく、今回のような既存システムのレガシー脱却・リプレイスプロジェクトにおいても豊富な実績を有しています。
「技術的負債を抱えたまま、リプレイスに踏み出せない」 「サービスを止めずに、安全にシステムを移行したい」 「仕様が複雑な大規模システムを、アジャイルに改善していきたい」
このような課題をお持ちの企業様は、ぜひ一度、株式会社ALBYにご相談ください。


